実録公開-失敗から学ぶSalesforce運用の「3つの壁」【第1弾:体制編】〜孤独なシステム管理者のしくじりストーリー〜
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この記事で分かること
✓ Salesforce運用の「理想と現実」:脱Excelがうまくいかなかった原因と実態
✓ 利活用を阻む「3つの壁」: 体制・運用プロセス・技術という、失敗に共通する構造的課題
✓「体制の壁」を突破する3つの具体策
目次
本記事は、Salesforceの導入や運用で誰もが一度は直面する「理想と現実のギャップ」を、弊社のシステム管理者が自らの「しくじりストーリー」として赤裸々に語るシリーズの第一弾です。
多くの企業が「Salesforceを導入すればすぐに業務が改善する」と期待しますが、実際には困難が待ち受けていることも珍しくありません。本編では、実体験に基づいたリアルな失敗事例から、いかにして運用を軌道に乗せ、最終的にAI活用まで見据えた高度な活用を実現したのか、その処方箋を公開します。
第一弾となるこの記事では、弊社のSalesforce導入から現在までの歩み、Salesforceの利活用を妨げていた3つの壁、1つ目の課題である「体制の壁」とその乗り越え方を詳しくお伝えします。
はじめに~Salesforceの導入から現在にいたるまで~
「データドリブンな意思決定」を目指してSalesforceを導入
Salesforce導入当初、経営層が描いていたビジョンは「データドリブンな意思決定」という輝かしいものでした。具体的には、「売上向上のために最新の商談状況を常にリアルタイムで把握し、迅速に次の一手を打ちたい」という明確なニーズがありました。これは多くの経営層がSalesforceに抱く共通の期待であり、ビジネスの成長を加速させるための正解と言えます。
しかし、この「経営層の理想」と「現場の運用」が乖離し始めたところに、後の「しくじり」の芽が隠されていました。理想が高ければ高いほど、システムを実業務に落とし込む際の摩擦は大きくなります。なぜこの理想が一度は暗礁に乗り上げたのか、その背景を次の章から紹介していきます。
脱エクセルを目指すがそうそう、うまくはいかない
2021年のSalesforce導入当初は「脱Excel」を旗印に掲げ、会社全体で高い意欲を持ってスタートしました。
しかし、運用が本格化するにつれ、現場の意識は低下傾向を辿ります。私が2021年11月にジョインした頃は、まだやる気に満ち溢れていましたが、全社的なSalesforce意識は反比例するように下がっていきました。
2022年には「Professional Edition」の機能限界に突き当たり、上位の「Enterprise Edition」への格上げを試みるも断念するという、技術的な挫折も経験しています。この時期は「システムを導入したはずなのに、なぜかExcel管理から抜け出せない」という、多くの管理者が直面する中だるみの時期であり、組織としての活用意識が最も低かった時期でした。

改修プロジェクトを経た結果、最終的には…
どん底からの脱出劇は、徹底した改修プロジェクトの完遂によって実現しました。かつては形骸化していたレポートやダッシュボードが、今では「日々新しいデータ」が更新される生きたツールへと生まれ変わりました。
その象徴的な出来事が、社長自らがSalesforceのダッシュボードを積極的に活用し始めたことです。現在、弊社のホーム画面には「Forecast Meeting」や「顧客レポート実施状況」など、会議や実務に直結する項目が並んでいます。以前のような「入力のためのシステム」ではなく、「意思決定のために見るべき画面」へと進化したことで、Salesforceが社内のインフラとしての地位を確立するに至ったのです。
データドリブンな意思決定ができるように! 利便性もアップ
改修後の最大の変化は、経営層と営業現場の両方に、Salesforceを利用するメリットが浸透したことです。
経営層からは「データを1カ所でまとめて見れるので、全部署で同じデータを見て会話ができるようになった」という声が上がっています。これは「情報の透明化」が、組織の共通言語を作ったことを意味します。また、最新の商談状況が可視化されたことで、顧客に対する「適切なアクションプラン」が立てやすくなったという、戦略的な成果も出ています。
一方、営業担当者にとっても、Salesforceが「自身の業務を助けるツール」となり、更新商談の確認漏れを心配する必要がなくなるなど、精神的な負担軽減にも寄与しています。
改修プロジェクトの苦難の道のり -Salesforceの利活用を妨げていた、3つの壁
最終的には改修プロジェクトは無事終えることはできたのですが、私たちが直面した苦難を改めて整理すると、どの企業にも共通する「3つの壁」に集約されます。
1つ目は、リソース不足や役割分担の不備に起因する「体制の壁」。
2つ目は、入力ルールの欠如や属人化が招く「運用プロセスの壁」。
そして3つ目が、エディションの制限やUIの使い勝手の悪さといった「技術の壁」です。

これらは個別に存在するのではなく、互いに複雑に絡み合っています。例えば、技術的にUIが悪ければ運用フローが乱れ、それが管理体制の負荷を増やすという悪循環です。
本記事では、ひとつめの壁であった「体制の壁」をどう乗り越えたのかをお話します。
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体制の壁:「孤独な奮闘」と「現場の無関心」
当時、体制面で起きていた最大の問題は、「場当たり的な対応」でした。
社内エンジニアが経営陣からのリクエストをつどつど受けて、そのまま作業するという、受け身の構図になっていました。リクエストの背景にある本当の課題を深掘りせず、言われた通りに構築するため、システムに一貫性がなくなっていきました。
その結果、管理者が必死の想いで機能をリリースしても、現場からは「使いにくい」「なぜこれが必要なのかわからない」と言われ、なかなか使ってもらえないという負の連鎖が起きていたのです。この「孤独な奮闘」と「現場の無関心」の溝こそが、体制不全がもたらす最大の弊害でした。
体制不全が起きていた3つの理由
体制面が機能不全に陥っていた理由は、大きく分けて3つありました。
第一に、場当たり的な「その場しのぎ」の対応が常態化し、中長期的なビジョンに基づいた開発体制が整っていなかったことです。
第二に、実際に改修を担当するシステム管理者が、営業現場の具体的な実務やビジネスの流れを深く理解しきれていなかった点です。その結果、現場の真のニーズに応えることができず、的外れな機能ばかりが積み上がってしまいました。
そして第三に、機能をリリースすること自体がゴールになってしまい、その後のユーザーへのフォローや「定着化支援」が全くの手付かずであったことです。
これらの要因が重なり、管理者の「孤独な努力」が空回りする体制となっていました。
体制の壁を突破するための3つの取り組み
取り組み① 改修チームの組成、現場ヒアリングの徹底
この状況を打破するため、私たちはまず「コンスタントに改修を回せる体制」の再構築に着手しました。
経営陣からのリクエストを鵜呑みにするのではなく、現場の「エンドユーザー」の声を直接聞くためのヒアリングを徹底したのです。
具体的には、社内の待機エンジニア(プロジェクトアサイン待ちのエンジニア)を改修チームに引き込み、リソースを確保した上で作業を分担。
さらに、全ての改修は経営陣の「承認後」に実行するプロセスを確立し、開発の優先順位と妥当性を担保しました。
これにより、単なる作業者集団から、自社の課題をきちんと把握し、戦略的に解決を図る「攻めの改修チーム」へと変貌を遂げました。

取り組み② サポートチームの組成
システムを改善する一方で、現場の「困りごと」に即座に対応する「サポートチーム」を別途発足させました。
改修チームが「システムの進化(追加改修)」を担うのに対し、サポートチームは日々の営業活動に寄り添う「営業サポート」を専門に行います。
これまでは管理者が開発も問い合わせ対応も一手に引き受けてパンクしていましたが、役割を分担することで、現場のユーザーが「誰に、いつでも、気軽に相談できる環境」が整ったのです。この心理的な安心感が、Salesforceに対する現場の拒絶反応を和らげ、共創の土壌を作る大きな一歩となりました。

取り組み③ 勉強会をはじめとした定着化支援
体制が整った次のステップは、リリースの価値を最大化する「伝え方」の改善です。
新機能をリリースして終わるのではなく、現場向けの勉強会を定期開催し、同時に実務に即したマニュアルを展開して定着を徹底的に支援しました。
さらに、質問のハードルを下げるために「Slackワークフロー」を活用した相談フォームを設置。起票分類や記載内容をシンプルに入力するだけで、管理者に声が届く仕組みになっています。
現場からの「ちょっとした疑問」を放置せず、スピード感を持って解消し続けることで、システムは徐々に組織の文化へと溶け込んでいきました。

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まとめ
体制面の壁を乗り越えた要点は、仕組み化と役割分担に集約されます。
まず、場当たり的な対応を「改修チームの組成」によって組織化し 、自社業務への理解不足を「現場ヒアリングの徹底」と「エンジニアの参画」で補完しました。
そして、最も欠けていたリリース後のフォローを「サポートチームの組成」と「勉強会を通じた定着化支援」によって手厚くカバーしたのです。
この一連の対策により、システム管理者が独りで抱え込んでいた課題がチームの課題となり、組織全体でSalesforceを育てていく体制へと転換することができました。

次回は2つ目の壁、「運用プロセス」の壁をどう乗り越えたのかをお伝えします。
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